熱冷まし(解熱剤)の使い方(中国新聞1/11(火)掲載)


[広島市小児科医会の藤江篤志先生が答えます]

熱が出る理由をご存じですか。①病気だと教えてくれている、②免疫力を高めてくれる、③細菌やウイルスが増えるのを抑えてくれる―などです。ですから、熱が出たからといってすぐに熱を下げないといけない、ということはありません。
また、熱冷まし自体は、病気を治すものではありません。一時的に熱を下げるだけのものです。特に子ども用の熱冷ましは、熱を下げる力が弱く、使用後1時間から1時間半で1度か1度半しか下がりません。また、3時間くらいで効果が切れてしまいます。
ですから、熱があっても機嫌がよく、食べたり飲んだりできる場合には、熱冷ましを使っても、あまり意味はないでしょう。
熱が続いて水分や食事が取れなくなった時や、不機嫌で眠れない時などには、決められた量の熱冷ましを使ってみてください。必ず体温を測ってからに使うようにしましょう。病気の状態や、熱冷ましの効果を知るために必要です。熱が少し下がれば、水分補給ができたり眠れるようになったりします。
また、効果が不十分で再び使う時には、最低でも6時間以上開けないといけませんし、多くても1日3回までしか使えません。タイミングを考えて上手に使うことが大切です。
(広島市小児科医会・藤江篤志 ふじえ小児科)
スポンサーサイト
薬の飲ませ方(中国新聞1/4(火)掲載)


[広島市小児科医会の堂面政俊先生が答えます]

昔に比べたら、今の薬は格段に飲みやすくなっているのに、「子どもが薬を飲みません」という相談をよく受けます。なぜ、薬を飲まないのでしょう。
一つは味が嫌いな場合。牛乳などに溶かして与えると、高い確率で飲んでくれます。ココアもいいでしょう。逆にオレンジジュースなどに混ぜると、苦味が増す薬もありますから、お母さんがまず試飲してみましょう。
初めは甘いけれど、後味が苦いと嫌がることが多いようです。ほとんどの小児用薬は食前に飲んでも構わないので、食前に試してみるのもいいでしょう。それから、うまく飲めたら褒めてあげることが大切です。
もう一つは、飲ます側の気持ちの持ち方でしょうか。約20年前のぜんそくの薬は非常に苦くて、お母さん方が涙ぐましい努力を重ねて飲ませていました。飲めなかったら大発作が起き、呼吸困難を起こすからです。苦い薬であっても、それを飲ませることは子どものための行為です。あの手この手で根気よく飲ませてあげましょう。幼児といえども、飲ます側の真剣さは感じています。
予防接種でも注射で泣いている子に「痛いね、ごめんね」と声を掛ける方がいます。でも、子どものためにする注射ですから謝る必要はなく、「よくがんばったね」と褒めるべきでしょう。
(広島市小児科医会・堂面政俊 堂面小児科内科醫院)
ノロウィルス(中国新聞12/28(火)掲載)


5歳の息子が通っている保育園で、ノロウイルス(小型球形ウイルス)が原因の嘔吐下痢症が流行しているそうです。ノロウイルスって怖いのですか。

[広島市小児科医会の山本恵先生が答えます]
ノロウイルスに感染すると突然嘔吐が何度もあり、あっという間に子どもがぐったりしてしまいます。感染力が非常に強く、集団感染も発生しやすいです。そのために怖がられていますが、死亡することはほとんどありません。
嘔吐と発熱が1~2日が続き、約7日間、下痢になって水のような便が何度も出るのが主な症状です。嘔吐は夜間などに突然始まり、一晩中続くため厄介です。
脱水がひどくならないようにするのがポイントです。ただ、吐き気が強い子どもに一度に大量のジュースを与えては逆効果です。経口補液飲料を10分間ごとに10㏄ずつ飲ませる治療が一般的になってきました。ぐったりして飲む元気もないときは、医療機関を受診してください。
吐き気止めの座薬を使ったり、点滴したりすることもあります。便にはノロウイルスが大量に含まれており、ウイルスを体の外に出したいため、下痢は止めません。
患者さんの便や吐物から蒸発したノロウイルスをほんの個吸い込むだけで感染してしまうため、集団感染が起こりやすいです。下痢の間は、保育園や幼稚園、学校をお休みしてください。
(広島市小児科医会 山本恵)
どんぐり小児科
病院に行くときは(中国新聞12/21(火)掲載)



[広島市小児科医会の森美喜夫先生が答えます。]
診断は、症状の経過や家庭での状況を聞いて進めます。ですから、子どもの様子を一番よく知っている人が受診に付き添うのが基本です。
今回の場合は、お母さんにお子さんの症状の経過のメモを書いてもらい、持参してください。伝言のみでは、情報があやふやになりがちです。できるだけ多くの正確な情報が、的確な診断につながります。
メモのほか、母子手帳、保険証、診察券も忘れずに。他院に受診して使っている薬があれば、その情報も必要です。
3歳なら、お気に入りのおもちゃや絵本があると待ち時間が楽でしょう。乳児の場合は哺乳瓶、おむつ、着替えを用意しましょう。風邪でせきがひどい時には、マスクを着ける心配りが大切です。
発疹は、受診時には消えていることがあるので、出たときに携帯電話やデジタルカメラで写真を撮っておくのも1つの方法です。乳児の下痢では便を持参すると、診断に役立ちます。
診察では口の中を見ますので、診察前には食べ物を与えてはいけません。診察や処置のときに子どもが動くとけがをする危険がありますから、しっかり抑えてください。
(広島市小児科医会 森美喜夫 もり小児科)
慢性じんましん(中国新聞12/14(火)掲載)



[広島市小児科医会の有田昌彦先生が答えます。]
じんましんが1カ月以上続く場合を、慢性じんましんと呼びます。一般にじんましんは食物アレルギーで起こると思われがちですが、食物アレルギーが原因の場合は、食後2時間以内に起こる急性がほとんどです。
慢性の多くは原因が特定できません。一部にはアレルギーとは関連のない食品成分(鮮度の悪い魚や肉によるもの)、人工色素や保存料などの食品添加物が原因のこともあります。一般に風邪をひく、ストレス、皮膚をかく・圧迫する、長湯、発熱、汗、運動などで出やすくなります。規則正しい生活に努め、鮮度のよい食材を用いた自宅での調理を心掛けましょう。
治療には抗ヒスタミン薬と呼ばれる内服薬が有効です。ただ、抗ヒスタミン薬には数多くがあり、患者によって有効な薬が異なります。1~2週間試してみて、効果がなければ別の薬に変えてもらいましょう。
自分に合った薬が見つかり症状が治まっても、すぐに中止すると再発しやすい傾向があります。しばらく継続することが大切です。塗り薬に大きな期待はできません。
慢性じんましんは治ります。ただ、治るまでに数カ月、場合によっては数年かかることもあります。焦らずに治療しましょう。
(広島市小児科医会・有田昌彦先生 ありた小児科アレルギー科クリニック)